CASES/CASE / 007
AI 開発スタジオ

店舗向け物流の需要予測 AI

「長期休暇は人を集めても回らない」— 店舗向け配送に物流2024年問題と CO2 削減目標が重なるなか、繁忙期に人を増やす代わりに、配送を通常期のうちに前倒しする方針を需要予測 AI で裏付けた。改善を続けられるデータサイエンスチームを顧客側に立ち上げ、1.8年の伴走で配送回数を半減させた。

LogisticsForecastingData Science
TYPE
R&D 共創
ENGAGEMENT
1.8年
SCALE
大規模
OUTCOME
配送回数半減
店舗向け物流の需要予測 AI

長期休暇の配送を通常期のうちに減らす

店舗向け配送の負荷は、長期休暇に集中します。この案件では、物流2024年問題(ドライバーの労働時間規制)と CO2 削減目標への対応も重なっていました。そこで、繁忙期に運ぶ荷物の総量を減らす方針を立て、それが成り立つことをデータで裏付けました。

店舗ごとに、次の補充までの日数の余裕は大きく違う。それを予測できれば、繁忙期の配送を前倒しして減らせる。

ドライバーの労働時間が規制で限られるうえ、長期休暇は人手がさらに足りなくなります。そのため、繁忙期に増員するという選択肢は最初からありませんでした。CO2 削減目標の面からも、答えは配送回数そのものを減らすことに絞られていました。

だからこそ、解決の方向は「繁忙期に増員」ではなく、「繁忙期の前に補充できる店舗を見つける」だと、最初の議論で合意しました。この方針が固まれば、AI で何を予測するかは自然に決まります。

「在庫切れまで余裕がある店舗」をデータで見つける

どの店舗の在庫が何日もつかを、過去の販売パターンから予測します。在庫に余裕のある店舗へ通常期のうちに前倒しで配送できれば、長期休暇の配送回数そのものを減らせます。

予測対象を、販売量から「次の補充までの日数の余裕」に置き換えました。

  • 入力データ:過去の販売量・季節要因・店舗属性・休暇カレンダー
  • 出力:店舗ごとの「次の補充までの日数の余裕」と「前倒し配送の妥当性スコア」
  • 判断:妥当性スコアと配送ルートのコストを突き合わせ、前倒しする店舗の配送を通常期のルートに組み込む

予測精度を上げること以上に効いたのは、出力の形を配送計画に合わせたことです。精度を細かく詰めても、その数字で配送計画を動かせなければ、現場では使われません。

改善を続けるチームを、顧客の社内に残す

予測モデルだけ納品しても、運用しながら改善できなければ、効果は契約終了とともに薄れます。改善を続けられるチームを、案件の進行に合わせて顧客の社内に立ち上げました。

予測モデルは、状況の変化に合わせて再学習を続ける必要があります。この再学習のサイクルを顧客側で回せるかどうかで、契約終了後も効果が続くかが決まります。

データサイエンスチームを育てながら進める

顧客側のデータサイエンス未経験メンバーを含むチームを、案件の進行とともに育てました。輪読会と設計レビューを継続的に回し、納品後も顧客の社内に知見が残る形で進めました。

  • 輪読会:専門書から業務に直結するモデル設計の章を選び、毎週読み進める
  • 設計レビュー:判断の根拠を、メンバー側が口頭で説明できるところまで詰める
  • 採用面接への同席:増員時の候補者の合否判断にも加わる

1.8年の支援の成果は、配送回数の削減にとどまりません。案件の終了後も、顧客の社内でデータサイエンス業務を続けられる体制ができました。

1.8年の伴走で配送回数を半減

配送回数の半減は、モデル単体の精度だけでなく、予測から配送計画、チーム育成までをまとめて担ったことで実現しました。

  • 配送回数を半減
  • 1.8年にわたり、データサイエンスチームの立ち上げを支援

半減につながった要因は、二つあります。一つは、配送を前倒しした店舗を同じルートにまとめて、一回あたりの配送密度を上げたこと。もう一つは、補充タイミングの予測精度が上がり、安全マージン分の余分な配送がなくなったこと。両方が同時に効いて、年間の配送回数そのものが減りました。

成果を出すだけでなく、経営層向けの解説資料づくりまで担いました。

物流の最適化は、繁忙期の前にどれだけ準備できるかで決まる。

経営層向けの解説資料を作った理由

狙いは、「なぜ半減できたのか」を経営層が自分の言葉で説明できるようにすることです。納品物を増やすためというより、案件を続けるために欠かせない工程でした。

R&D 案件で起きやすい失敗は、出した数字が経営層に伝わらず、次年度の予算が打ち切られることです。技術的に正しい説明と、経営判断に使える説明は、別の文書として書く必要があります。

解説資料は、「どの判断が、どの数字に効いたか」⁠と「次の1年で、どこまで伸ばせるか」⁠という二つの問いに答える形で構成しました。この二つが揃うと、R&D は「コスト」ではなく「投資」として扱われます。